巻頭言
        Nothing about us without us

                ~私たち抜きに私たちのことを決めないで~

 私たちの社会は法律という枠組みで動いています。私たちが関わる医療や福祉も法律という後ろ盾があり具体化しています。ここ数年で、私たちが関係する法律が大きく変わるのをご存知でしょうか?
 あの悪名高い自立支援法が新政権になり、見直しをされています。ここ数年で、この法律に代わるものが必要になります。
 また、国連では、2006年に障害者権利条約を採択し、2008年に発効しました。日本も2007年に署名はしましたが、批准は法整備などが不十分なためにまだできていません。この条約はこれまでの障がい者福祉のパラダイムが大きく転換しています。まず、条約を作る段階から当事者が国連に集まり、話合いに参加したことで、当事者の視点から法律が作られています。その時のスローガンがNothing about us without us(私たち抜きに私たちのことを決めないで)です。当然、障がい者の概念も大きく変わります。障がいのある人は守られるだけの存在ではなく、障がいのない人と平等の権利を持っていることという考え方です。そして、障がいの有無にかかわらず地域でともに暮らすインクルーシブ社会を目指すことです。医療モデルから社会モデルへの転換です。
 この2つの事情を受けて、日本でも、2009年12月に障がい者制度改革推進本部が設けられて、推進会議で障がい者関係の法律が検討されています。今後の障がい者福祉を考えていく上では大切な法律になります。推進会議では、2011年「障害者基本法抜本改正、12年障害者総合福祉法制定、13年障害社差別禁止法制定とスケジュールが定められています。
 全国でもこの法律に関する理解を深め、地域フォーラムを開き、意見交換を行われています。福岡でも2月12日に1000人規模の会が開催されました。当会も県内の障がい者団体とともに実行委員として参加しました。
 私たちは患者さんやご家族のニーズを聞き取り、患者さんを中心にどんな支援をするかを生活レベルで考えます。それが法律レベルでも、行われていることが新鮮でうれしく感じました。しばらくは目が離せなくなりそうです。
 最後になりましたが、地域フォーラムへのたくさんの協賛金ありがとうございました。

会長 浅田 里美