巻頭言

会長 浅田 里美

 明けましてごめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。さて、皆さんの2010年はいかがでしたか?私にとっての2010年は、たくさんの人に助けてもらった年でした。言語聴覚士としての時間は極端に少なく、患者としての時間がほとんどをしめてしまいました。
 「患者(かんじゃ)とは、なんらかの健康上の問題のため、医師ないし歯科医師や専門の医療関係者の診断や治療、助言を受け、広義な意での医療サービスの対価を払う立場にある人。医者の側から見た語である。」(ウィキペディアより)
 患者として入院したとたん、まず、自分の時間や空間が制限されます。着るもの、食べるものも限られますが、コミュニケーションもかなり偏ります。話題はほぼ、自分の問題となる疾患について。体調や治療計画のやり取りがほとんどです。もちろん、必要なやり取りではありますが、自分の弱点である疾患についての話題が繰り返されると、自分が人として欠けているところがあり、自分自身がとても弱いものに感じてしまいます。そのうち自己決定もできないのではないかという思いに囚われることもありました。
 そんな時に、自分のアイデンティティを取り戻すコミュニケーションをしてくれるのが、看護師さんでした。看護師さんは、体調や基本的な情報を確認した後に、世間話をするのです。天気や外の様子、読んでいる本や持ち物についてなどですが、なぜかホッとするのです。情報としての必要性はあまりないのですが、人として病気に立ち向かう元気が湧いてくるように感じるのです。
 私たちが出会う患者さんは、どうでしょうか?私自身、最大限療育効果を上げるために限られた時間を使うことが主となり、余裕なく患者さんに対応していたように思います。間違いではないけれど、不十分だったかもしれません。結果だけを目指すのではなく、療育の過程も大切にすべきだと感じました。
 場所は病院という同じ空間ですが、医療スタッフから見た景色と患者から見た景色がこんなに違うものかと今更ながら驚きました。
 皆さん、世間話のできる言語聴覚士もなかなか良いですよ。