巻頭言

 去る5月15日、第12回福岡県言語聴覚士会定期総会が皆様のご協力のもと無事行うことができました。
 平成24年に向けての診療報酬、介護報酬の同時改定に向けての取り組み、障がい者関係の法律の全面的なパラダイムの変化、言語聴覚士の社会からの要請など様々な面にフォーカスして考える必要性があり以下の提案を元に2011年度の会の方向性を決めました。

1.専門性
 昨年度から吸引が言語聴覚士もできるようになりました。摂食・嚥下の場面ではさらに高い技術と責任が求められるでしょう。理学療法士会、作業療法協会のとの合同研修では、言語聴覚士は訪問リハビリにおいて何ができるのかとの質問がたくさんありました。耳鼻科医主催の耳の日事業では言語聴覚士として講演を依頼されました。このようなさまざまな変化や要請に対し私たちの知識・技術は常に更新され、説明できるものにならなくてはなりません。その要望に応じられるように力をつけていきたいです。

2.アイデンティティ
 養成校での言語聴覚士の求人は多く、就職率も良いと聞いています。それに比べ、理学療法士や作業療法士はそろそろ飽和状態だそうです。両職種は職域を守り開拓していくことも意識して活動しています。自分の職種では何が社会に貢献できるかを意識しながら、取り組む姿勢は見習いたいものです。言語聴覚士だからこそできることはたくさんあります。もちろんそのためには県士会や協会とともに制度の改正や社会情勢に関心を持ち、活動する必要があります。私たちも、そう遠くない時期に、この課題は突きつけられることになります。日々の仕事に向いつつ、常に、社会を意識して活動していきたいです。

3.人権意識
 障害者基本法の第2次案ができ、総合福祉計画の検討もされています。今回の改訂は、パラダイムの転換といわれています。まず、障がい者は「守られるべき客体」から、「権利の主体者」と変わります。支援も、「医療モデル」から「生活モデル」への流れになります。
 「情報やコミュニケーションの保障」は別枠で設けられています。私たちの携わる仕事はかなり人権と関わりのある仕事ですが、明確化されたことで、私たちの人権意識もさらに磨いていく必要があると思います。

4.連携
 リハビリテーションの分野では、一職種で完結できることは何もありません。患者さんとの連携、他職種との連携、日本言語聴覚士協会との連携、社会との連携を深めながら、より良い会の運営を行っていきたいです。
 この1年が、活力に満ちた有意義なものになるようご協力をお願いいたします。 

会長 浅田 里美