巻頭言                      
                                                   副会長 衛藤 泰博 

 私は、この4月に、県内の言語聴覚士養成校の入学式に参加する機会がありました。入学式では、言語聴覚士
になるという大きな夢と希望を持って入学してきた新入生に向けて、来賓の方々から、暖かい励ましのメッセージ
や体験談とともに、絆やコミュニケーション、連携といったキーワードが紹介されていました。私も県士会の立場か
ら、学生として、しっかり学んで、卒業後は、早く県士会の仲間になってもらうことを期待して、次のようなお祝の言
葉を述べました。
 フランスの詩人、ルイ・アラゴンの詩を紹介します。
『学ぶとは、誠実を胸に刻むこと。教えるとは、ともに希望を語ること』
 皆さんは、これから学生として、基本、基礎をしっかり学んでください。将来の仕事を目指して、誠実を胸に刻んで
ください。そして、資格をとり、仕事を始めたら、『訓練』をするのではなく、患者ご本人、子どもや保護者、家族と一緒
に、希望や未来について、いろんなお話ができればいいですね。教育の分野では、訓練ではなく『学習』という表現
を使います。はじめから難しい課題、苦手な課題をしていても、本人に意欲がある場合は大丈夫ですが、長くは続き
ません。その人の得意な分野、好きなことなどを知り、できるところをさらに伸ばすことで、いつの間にか、苦手なところ
も少しずつ伸びていくようです。患者さんや子ども、保護者が、ほっとする心のオアシスのような場になるように、患者
さんや子どもを中心に、いろんな人をつなぐコーディナーターとして、またよき相談相手、話し相手、よき理解者になれ
るように、がんばって下さい。」
 ふりかえってみれば、私も、学生の頃や仕事を始めた新人の頃は、いろいろな夢や希望を持っていました。仕事に
慣れ、いつの間にか、あたりまえのように仕事をするようになり、日々の業務に追われ、お互いの絆やコミュニケーショ
ンといった、大切なことを忘れていることに気づくことがあります。そんな時、私は、先に紹介した詩人の言葉を思い
出して、自分自身をはげましています。
『学ぶとは、誠実を胸に刻むこと。教えるとは、ともに希望を語ること』

                                                 第51号 2012年6月25日 発行