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 『エビデンスに基づいた吃音支援入門』

 発 行 :学苑社
 著 者 :菊池 良和
 金 額 :1995円

 「エビデンス」という日常生活では聞き慣れない難しい用語を使っていますが、医療の世界ではごく当たり前に使っている用語です。吃音を知らない人が言ってしまいがちな誤解「吃音は意識させない」「ゆっくり話しなさい」「今どもっていないから、あなたの気にしすぎですよ」など、セラピストが最低限知っていないといけないことは、確実に伝わるように、見開きで1テーマがまとまり、ポイント、イラストや国家試験対応箇所を示しています。
 吃音相談に来る親・本人は、必ず「吃音は治りますか?」と質問してきます。普通の反応です。それに対して、簡単に「治らない」と応えてしまうのは、相談しに来た人が落胆するだけです。何かイベントがあって、それの解決策として考えたのが、「吃音を治すこと」と考えて、病院に来るのです。また、相談に来る人たちは、吃音の問題の全容を分かっていなく、語彙が足りないから、「治したい」と言うだけです。
 吃音が簡単に治す方法があれば、治すべきですが、介入したからといって簡単に治るものではない。それは、過去の歴史を踏まえれば、容易に分かります。治る人は、ほっといても治ります。しかし、吃音が治らない人・親にどう向き合っていくか、が真のセラピストとしての素質が問われることだと思います。「吃音は治せないけど、○○という支援はできる」というセラピストが、この本によって1人でも増えることを期待しております。


『第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』


 発行者 :光文社
 著 者 :マルコム・グラッドウェル
      沢田博・阿部尚美(翻訳)

 長時間考えてたどり着いた結論よりも、最初の直感やひらめきによって、人は物事の本質を見抜いていることが多いそうです。今回紹介する本の中ではこれを「適応性無意識」と呼んでいます。

 “ある美術館がひとつの美術品を購入することになった。その美術品が本物かどうか調べるため、美術館の鑑定チームが14ヶ月かけて調べ上げたが、疑わしいところはない。購入を決めた後、世界の著名な美術史家たちに披露することになるが、彼らは一目見ただけで「贋作だ」と判断した。後々の詳しい調査で鑑定チームの科学的根拠を覆すような証拠が次々と明らかになっていく…。”
 説明のできない「なんとなく」の判断について、たくさんの事例や実験を紹介しており、直感を鍛えるノウハウも紹介されています。
 緻密で時間のかかる理性的な分析と同じくらいに、瞬間のひらめきには大きな意味があることを教えてくれる本です。


 『アイディア&ヒント123
   障がいの重い子の「わかる」「できる」みんなで「楽しめる」』


 発 行:エンパワメント研究所
 
   マジカルトイボックス 編
 発 売:筒井書房

 障がいが重たい子どもの遊びやコミュニケーションの方法を考えるのは楽しい反面、なかなかアイディアが思い浮かばず苦労することもあります。
 そんな時、こんな本はいかがでしょうか。この本は、主に障がいの重い子どもを対象にATやAACを普及させていくことを目的に発足したボランティア団体(マジカルトイボックス)で行っているイベントで紹介されたアイディアがまとめられています。新しい機器だけではなく、シンプルで長い間使われている事例も紹介されていて、大掛かりなものからすぐにでも使える物まで幅広いことが特徴です。また、写真やイラストも豊富なので、使い方のイメージも持ちやすく、自分なりの工夫やアレンジのアイディアが思い浮かびそうです。
 コミュニケーションや遊びの手段を考えるのはもちろん大切なことですが、「おもしろい!」「それからどうするの?」「あんなことしたいな」など、そのこの内面にあふれる想いが育っているのかな・・・という視点が伴っていないとSTの自己満足になってしまいます。ともすると訓練場面で道具を使わせることに一生懸命になりがちな私達に、子供の何気ない生活の中に楽しさがいっぱいつまっていること、「わかる」「できる」経験が意欲や楽しさの源であることをあらためて気づかせてくれる1冊です。


 
 「アノミア」失名辞ー失語症モデルの現在と治療の新地平

 発 行:2010年5月15日 第1版第1刷
 著 者:マッティ ライネ・ネイディン マーティン
 訳 者:佐藤ひとみ  発行者:株式会社 医学書院

言語の最も基本的な機能である呼称が、脳損傷のために障害されるという症状を多面的に考察している本です。本書はもともとフィンランドのMatti Laine教授、米国のNadine Martin教授という、失名辞の理論的知見を失語症治療に応用するための協同研究をされてきたお二人が書かれたAnomia : Theoretical and Clinical Aspectsの全訳になっています。「失名辞」を正常人でもみられる“名前が出てこない”、“近い単語に言い誤る”という現象から、失語症者の呼称障害まで分析されている点や、脳内の「ことばの座」をこれまでの脳画像研究データを基に考察している点は非常に興味深いものです。また、現在の失語症の治療における認知神経心理学の必要性を、これまでの失語症治療の歴史的経緯を踏まえて説明してあり、認知神経心理学に対して苦手意識のある方でも、比較的抵抗感なく入っていけます。更に失名辞の臨床的評価法の提唱と治療研究の論評は、これから研究をされる方には大変参考になるのではと思います。




  「子どものための摂食マニュアル いただきます」

 私たちにとって「食べること」は生きていく上で欠かせません。
食機能に問題を持つ子どもたちにとって、上手に食べ物をこぼさずに口にはこんだり、噛んで飲み込んだり、水を飲んだりするのは難しいものです。
私たちは、食事に問題を持つ子ども達の療育に関わる専門職(言語聴覚士、作業療法士、理学療法士、保育士、栄養士、調理業務員)で構成する摂食研究グループです。
 今回、食事について基礎的な知識と具体的な対応をわかりやすくまとめた冊子を作製しました。
 内容は二部構成になっています。一部は、子どもの子どもの摂食機能の発達や摂食嚥下メカニズムなど基本的な知識をまとめた基礎編。二部は、日頃、摂食についてだされる心配事への具体的な対応策をまとめた実践編です。
実費でお分けしています。保護者の方や子どもたちに接する多くの方にお役に立てれば幸いです。

価格:250円(送料はご負担願います)
お問い合わせ先
 福岡市社会福祉事業団 福岡市西部療育センター
  〒819-0005 福岡市西区内浜1−5−54
                    浅田、坂中、松尾
   FAX   092−883−7163
   E-mail seibu-st@fc-jigyoudan.org


 「ことばをはぐくむ〜育つ力・育てる工夫〜


 生まれた喜びとともに始まった子育て。元気に育ってほしいと思うお父さんお母さんにとって、子どもの発達はうれしい反面、気になることでもあります。
 ことばの遅れを心配するお父さんお母さんは少なくありません。「どうすればうまくことばを覚えられるのでしょう」「発音が悪いように思うけどどうしたら良いのでしょう」「やりとりがちぐはぐだけど大丈夫でしょうか」「親としてどんなことをやってあげられるのでしょう」と不安はつきません。
 この本は、子どものことばが育つ基本的なみちすじと、ことばがうまく育つための工夫を言語聴覚士(ことばの専門家)と臨床心理士(発達の相談員)が書いています。

2006年10月 初版
A5版 
発行者  コミュニケーションを支援する会
      子どもとことば企画
連絡先  〒819-0005
       福岡市西区内浜1-5-54
       福岡市立西部療育センター 相談係
       FAX (092)883-7163