会長挨拶
福岡県言語聴覚士会は2000年に発足し、2013年には一般社団法人となりました。20年という大きな節目を迎えることができた喜びを感じるとともに、新たな時代に向けて歩みを進めていきます。
新型コロナウイルス感染症とコミュニケーションの問題
新型コロナウイルス感染症拡大は、私達の生活においてコミュニケーション活動がいかに重要かを再認識するきっかけとなりました。行動の自粛、マスクをする、密接して話をしない、食事中会話をしない、などコミュニケーションに多くの支障が生じました。それにより孤独を感じたり、会話の機会が減ったということもあるのではないでしょうか。また、言語聴覚障害を有する人々にも大きな影響を与えました。例えば、マスクの着用は、難聴者にとっては、口もとがみえず聞き取りの問題をより大きくしてしまうでしょう。行動の自粛により、失語症者の楽しみである友の会の開催も中断しました。会話機会の減少や社会参加の制約を受けることとなりました。さらに、地域包括ケアシステムにおいては、各自治体の熱心な取り組みで、高齢者の身体機能や認知機能の改善という大きな成果をあげていた介護予防事業も、一時中断を余儀なくされています。
コロナウイルス感染症が落ち着いたあと、コミュニケーションや飲み込みに不安を抱える方々が顕在化することも予想されます。新たな時代に合わせた支援の仕方や職能団体としてのあり方が問われていると感じます。
社会に対して私たちができること
ひと昔前は、言語聴覚士は病院で働くことが最もポピュラーでした。しかし、超高齢社会を迎えた今、介護予防の観点が重要となり、言語聴覚士が地域で活動する機会が増えました。地域ケア会議への参加や介護予防事業に積極的に関わり、認知症や加齢性難聴などによりコミュニケーションに不安を抱える方々や摂食・嚥下障害の方々の、早期発見・早期対応に努め、元気な方々に対しても虚弱とならないよう予防のお手伝いをさせていただきます。
2018年からは、福岡県から業務委託を受け、失語症者向け意思疎通支援者養成講習会を開催しています。失語症者の要望に応じて、講習会を修了したサポーターを派遣し、同行支援を行います。市民の皆様とともに失語症者の社会参加の支援をさせていただきます。
小児領域においては、新生児聴覚スクリーニング、乳幼児健診、発達支援相談に言語聴覚士が関わる事が増えました。ことばや行動の問題を早期に発見できるようになっていますが、その後、専門的な療育を行う施設が不足しているという現状があります。福岡県言語聴覚士会としては、専門的な療育を行える施設やセンターの把握、また、近年増えている児童発達支援施設や放課後等デイサービスにおける言語聴覚士の支援の有無を把握し、スムーズに情報提供できるよう努めていきます。
また、毎年発生する自然災害に対して、専門職として備える必要もあります。被災地に派遣する言語聴覚士の登録と、支援に必要な物資の調達を進めています。避難所生活を強いられている方々に対して、復興支援をお手伝いすることはもちろん、避難所におけるコミュニケーション支援や飲み込みの問題に対してお手伝いができます。
私たち福岡県言語聴覚士会は、今後生じうる様々な事態への備えを万全に整え、他団体と連携しながら、地域住民の皆様のコミュニケーションや飲み込みに対する不安の解決に努めてまいります。
末筆ながら新型コロナウイルス感染症の一日も早い終息と、皆様のなお一層のご健勝をお祈り申し上げます。
一般社団法人 福岡県言語聴覚士会
会長 大内田博文